金属ボタンの調査について【市民学芸員体験講座】第31回
きんぞくぼたんのちょうさについて しみんがくげいいんたいけんこうざ だい31かい「学芸員の仕事は、実に様々。資料の収集、保管、展示をして、さらに講演まで!」 「そんな学芸員の仕事を気軽に体験し、小千谷のまだ見ぬ魅力を一緒に発見しましょう!」 と、そんなことで始まった【市民学芸員体験講座】も2年目に突入。 活動報告や参加者の感想などをご紹介します。 第31回は史跡調査演習「朝日山の調査~戊辰戦跡発掘から幕末の戦術を学ぶ~」 (2025年11月8日実施)
Published on November 26th, 2025(Updated on February 6th, 2026)
【報告 : 文化財調査員 関口美どり】
1. はじめに
2025年11月8日、市民学芸員体験講座「朝日山古戦場調査」の際に発見された金属製のボタンについて、画像検索やインターネット調査を行った。ここではボタンの特徴、歴史的背景、仮説、および今後の調査方針についてまとめる。
出土時の様子
講座参加者の市内在住、中学1年生が発見。
2. ボタンの特徴
- 表面には船に乗る2人の人物が描かれている。
- 裏面には「RICH TREBLE GILT」の文字と蜂のような虫のデザインがある(画像①②参照)。
- 「シノワズリ」と呼ばれる、17世紀中頃から19世紀にかけてヨーロッパで流行した中国風デザインを彷彿とさせる模様である。
- 「TREBLE GILT」は「3回の金メッキ」を意味し、「非常に豊かな(厚い)三重金メッキ」という品質保証や宣伝文句である可能性が高い。当時のヨーロッパの金属ボタンや服飾品によく見られた表現である。
画像①
表
画像①
裏
3. 類似品の調査
Google画像検索により、「Worth Point」(アンティーク・美術品・収集品を扱うオンラインデータベース)のサイト上に、同様の模様のボタン画像を発見した。 そのボタンには「T.W&W」の文字があり、1845年設立のフランスのボタン製造会社「Trelon Weldon Weil」のものと考えられる。この会社はアメリカ南北戦争時に両軍へボタンを供給していた。
4. 仮説
今回発見されたボタンには「T.W&W」の文字は確認できなかったが、もし同社製であれば、以下の仮説が立てられる。
- 南北戦争後、余剰となった武器(スペンサー銃、エンフィールド銃、ガトリング砲など)が日本に輸入され戊辰戦争で使用されたが、武器だけでなく洋服(軍服)も同時に輸入され、朝日山の戦いでも着用されていた可能性がある。
5. 考察と今後の調査
T.W&W社製でなくとも、このボタンは幕末維新期の日本における西洋文化流入を示す貴重な資料である可能性がある。武器以外に軍服も日本に輸入されていたかについては、軍事史学の専門家に確認を依頼する予定である。