紹介
『失われた時を求めて』の冒頭には、主人公の「私」がこれまでに過ごしたすべての寝室を憶えていて、それらのひとつひとつを想い出したというエピソードがあります。 たった一夜(諸説あり)のうちにベッドの上で想起した生涯が、岩波文庫版で全14冊にわたって語られる長編ですが、はじめて読んだときにこの一節に不思議と強く惹かれました。 それから、私は旅行をして宿をチェックアウトするとき、自分が寝ていた痕跡が残る布団の写真を撮るようになりました。(たまに忘れてしまいますが)この写真を見返したとき、史跡や食べ物の写真よりもあざやかに旅の記憶がよみがえる気がするのです。 とても長いので手を出すのに少しだけ覚悟が必要ですが、1巻の「スワン家のほうへ」だけでも読んでみてください。色々な翻訳がありますが、吉川一義さんの訳が好きで、枕元に置いて少しずつ読んでいます。